2014年5月16日金曜日

漢検1級 故事成語 平成23年度の問題で難しかった所


23年第3回

月と鼈(すっぽん)

 形の丸いことはちょっと似ているけれど、実は比較人ならないほど違いがある。差の大きいことのたとえ。
 「鍋蓋(なべぶた)とすっぽん」というのがある。



空家で声嗄らす

  無駄な骨折りをすることのたとえ。人がいない空家で声を嗄らすほど大声で怒鳴っても返事がないことから、無駄な骨折りを繰り返している人に対する皮肉として用いられる。


人生根帯無く 瓢(ひょう)たること陌上(はくじょう)の塵(ちり)のごとし

 意味:人生は市中の塵のようなものだ。
 「盛年重ねて来たらず」「歳月人を待たず」という故事成語がある。若いうちに一生懸命勉強しておくべきだという意味である。この語句は,陶濳(陶淵明)の『雑詩十二首』の第一首の中にある語句で,次のような詩である。

 人生根帯無く 瓢(ひょう)たること陌上(はくじょう)の塵(ちり)のごとし  
 分散し風を逐(お)って転じ此れ已に常の身に非ず  
 地に落ちて兄弟となる  
 何ぞ必ずしも骨肉の親のみならん  
 歓を得ては当に楽しみを作(な)すべし  
 斗酒(としゅ)比鄰(ひりん)を聚(あつ)む
 盛年重ねて来たらず  
 一日(いちじつ)再び晨(あした)成(な)り難(がた)し 
 時に及んで当に勉励すべし  
 歳月は人を待たず
 
 この詩は,酒が好きな陶濳(陶淵明)の酒の詩で,人生は市中の塵のようなもので,どこに吹き飛ばされていくか分からない。この身はどこに行くか分からない。だから,人はみな兄弟だ。うれしいときは楽しみ会うべきで,酒一斗を買い,隣近所の者を集めるのだ。年若き時は二度と来ない。一日にうちに朝は二度とはない。だから,時期を逃さず,努めて楽しむのだ。歳月は過ぎ行き待ってくれやしない。(だから若いうちに遊ぶのがよい。)と,酒を飲んで楽しもうという詩である。後世の人は,この詩の最後の四句だけを切り取って,直ぐに年とってしまうから,若いうちに大いに勉強しなさいという教訓にしてしまった。陶濳がこのことを知ったら,さぞ怒ったであろう。

 実は,陶濳のこの考え方は,後漢の時代にできた作者無名の「古詩十九首」(其の十五)にある。この詩の吟詠は一誠流の教本にもあって,吟を教わったが,人生は百にも足りない,だから若いうちに大いに遊ぼうという詩である。夜が長いと苦にせず,燭を持って遊べばいいではないか。遊ぶ金を節約するのは,愚者のすることだ。後世の笑い者となる。仙人となって長生きした王子喬(おうしきょう)のように長生きすることはできないのだからという詩である。

ところで,この詩の中の「何ぞ燭を持つて遊ばざる」を李白は,『春夜桃李の園に宴するの序』の中で取り入れている。
 
夫(そ)れ天地は万物の逆旅(げきりょ)にして,光陰は百代の過客(かかく)なり。しかして浮生は 夢のごとし。歓を為(な)す幾何(いくばく)ぞ。古人燭(しょく)を秉(と)って夜遊ぶ 。良(まこと)に以(ゆ  え)有るなり。(以下略す)
 
 酒の好きな陶濳や李白は,この古詩が気にいったに違いない。

 程 明道(ていめいどう)の詩,『秋日偶成』の中に,「富貴にして淫(いん)せず貧賎(ひんせん)にして楽しむ」という句があり,私は,気にいっていたが,よくよく考えてみれば,現代では貧賎では楽しめないことが分かってきた。習いごとでも旅行でもすべて金がかかる。だから,金銭に無縁の小生にとっては,遊びたくても遊べないことが多い。生まれ故郷の台南市に一度でいいからいってみたいと思うが,いまだにそれが果たせないでいる。少年時代から高校生まで育った故郷にも帰りたい,が,帰れない。若いころサイクリングした思い出の地にもあちこち行ってみたいと思うが,行けないのである。酒は下戸なので,飲めないし。

 陶濳にせよ李白せよ程明道にせよ,彼らは,大富豪ではないにせよ,こういう詩を作る人は,もともと金銭面で余裕のある人だ。だから,こういう粋なことが言えるのだろうと思う。ああ小生ときたら,情けなや,情けなや。詩吟とオカリナの練習をしたら,家庭菜園にでも出かけ,草でもむしるとしようか。それとも近くの沼にでも釣りに行くとしようか。 

「陌」は道の意



鷦鷯巣於深林、不過一枝(鷦鷯、深林に巣くうも、一枝に過ぎず
http://wwr2.ucom.ne.jp/hetoyc15/hitori/sasakikou.htm 佐々木・鷦鷯についての雑考
〔荘子 逍遥遊〕
ミソサザイは大きな林に巣を作っても,一枝しか必要としない。人は自分の分に応じて現状に満足するのがよい,というたとえ。



鷦鷯(「しょうりょう(旧カナではセウレウ)」とも訓)という漢字があてられるこの鳥は、わが国では北海道から九州まで広く分布する留鳥で、おもに山地の水辺に多くに住んでいて、概ね全長10センチほど翼長5センチほどの大きさとされる。ユーラシア産は一種だけで、背面は焦茶色、腹面は淡色で所々に細かい黒褐色の横斑が見られる。
 わが国の野鳥の中では最小の鳥といわれ、その小ささは、中国の古典『荘子』に「鷦鷯巣於深林、不過一枝(鷦鷯、深林に巣くうも、一枝に過ぎず)」とも記される。


蓼虫辛を忘る(りょうちゅうしんをわする)

蓼虫忘辛(りょうちゅうぼうしん)
:人の好みはさまざまで、好きになればどんなことも気にならなくなるというたとえ。蓼の葉を食う虫は、その辛さを気にしないという意味。



23年第2回

蜉蝣の一期 ふゆう‐の‐いちご

人生の短くはかないことのたとえ。
蜉蝣かげろうが朝に生まれて夕べに死ぬといわれるところから》人生のはかないことのたとえ。
「―の微命、もとより死を畏れず」〈露伴運命



修身斉家治国平天下 しゅうしんせいかちこくへいてんか

〔大学〕
天下を平らかに治めるには,まず自分のおこないを正しくし,次に家庭をととのえ,次に国を治めて次に天下を平らかにするような順序に従うべきである。儒教の基本的政治観。



三界の火宅、四衢の露地  (さんがいのかたく、しくのろじ)
苦悩に満ちた人間界と、それを離れた安らかで静寂な世界。法華経で心の安穏を説いたもの。「三界」仏教語で、欲界・色界・無色界、すなわち全世界。「火宅」火に包まれる家。煩悩の為に責められるこの世を燃える家にたとえたもの。「四衢」四つ辻。「露地」俗世界を離れた静寂な境地。

このことわざの出典  法華経



平成23年第1回

当て鏝(ごて)なしに左官は出来ぬ

《「当て鏝」に「当て事」をかけて》鏝がなければ壁塗りの仕事ができないように、当て事(目的)を持たなくては何事もできない。



裘葛(きゅうかつ)を易()・える

冬と夏を経過する。1年の月日が過ぎる。

きゅう‐かつ〔キウ‐〕【×裘葛】

皮衣と葛(くず)かたびら。冬の衣と夏の衣。
寒暑の移り変わり。1年間。



二卵を以て干城の将を棄つ(にらんをもってかんじょうのしょうをすつ)

有為な人材の小さな過去の欠点をとがめ立て、その貴重な人物を失うこと。
 衛(えい)の国主が将として有能な才を持つ苟変(こうへん)を、「役人時代に人民から二個の卵を徴収したことがあるので、有為な者ではあるがその理由で採用しない」といった時、子思が「人を用いるには長所を見て短所は見捨てるのがよい君主である」と教えた故事。

語:干城=干(たて)と城。国を守護する武人。


時は戦国時代、孔子の孫の子思が衛公に使えていたとき、苟変という男を大将に任用すべし、と推薦した。

これに対し衛公は“苟変は以前に役人であったとき、人民に割りあてて一人当たり鶏卵二個づつも
取り立てて食べたことがある、そのような人間に大将を命ずるわけはいかぬ”と反対した。



  これに対し子思はこうのべた“聖人が人を用いるやり方は、ちょうど大工が材木を用いるようなもので
役に立つところを取って用い、役にたたぬところは捨てる”。人間を用いる場合も同じ。長所を用いて短所は捨てる、
ということに徹底すればよいのである。今の世は、喰うか喰われるかの戦国の世にわずか玉子二個のために
国を守る将を棄てようとしている。このような不見識なことは隣国に知られないようにしなければならないと。

   

これは私の銀行時代の話
一人の銀行員がいた。あだ名は頑ちゃん、人の道に反したことについては一歩も譲らぬ頑固一徹という意味で、
不正については妥協も許さぬ頑固者であった。そのため小さな支店を転々として、年を重ねていた。
銀行の幹部としても触らぬ神にたたりなしの気持ちで頑ちゃん支店長を扱っていたに違いない。

時は終戦直後の銀行預金は、封鎖か一部生活資金のみ自由としてあった。
もちろん封鎖資金を自由化すれば処罰対象となる。

この封鎖破りを頭取が犯したのである。これを知った頑ちゃん、直訴に及んだため頭取は更迭。
しばらくしてこの話を頑ちゃんから聞いて驚いた。今は頑ちゃんも地下に眠っているが地獄の鬼に
義の何たるかを語っているのではなかろうか。

中国哲学に学ぶ 不況は会社守成の好機



明日は閻浮(えんぶ)の塵ともならばなれ
人間世間の塵となって飛び消えるものなら消えてしまえ。どうなろうとなるようになれ。どうとでもなれ。

えんぶのちり【閻浮の塵】
この世のけがれた事物。

えんぶのみ【閻浮の身】
人間世界に生まれた身。凡夫(ぼんぷ)



騏驥の跼躅は駑馬の安歩に如かず  ききのきょくちょくはどばのあんぽにしかず

〔史記 淮陰侯伝〕
千里を走る名馬もぐずぐずしていては,静かに歩み続けるつまらぬ馬にも及ばない。才能があっても努力しなければ,着実に努力する凡人に劣るということ。

1 【騏

足の速いすぐれた馬。駿馬(しゆんめ)




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