2014年5月12日月曜日

故事成語⑤


蕨の榾で手を切れば骨まで切れる  逆捩を食わせる  慷概死に赴くは易く、従容義に就くは難し   鋳掛(いかけ)屋の天秤棒(てんびんぼう)   窈窕たる淑女は寤寐(ごび)にこれを求む   臍の緒引き摺る    勧学院の雀は蒙求を囀る   枇杷と焼き魚を一時に食うべからず   嘉善の和は、一味に取るにあらず    藜羹を食らう者は大牢の滋味を知らず   駕籠舁き駕籠に乗らず   花中の鶯舌は花ならずして芳し   羝羊の藩に触る   考えと続飯(そくい)は練るほど良い    苫に寝て土塊を枕とす    翠は羽を以て自ら残なう    毀誉褒貶相半ばす       疏食を飯い水を飲み、肱を曲げてこれを枕とす    一髪千鈞を引く    辛崎の松は花より朧に   大廈の材は一丘の木にあらず   大行は細謹を顧みず   好んで酒を飲むべからず。微醺にして止むべし



蕨の榾で手を切れば骨まで切れる(わらびのほだでてをきればほねまできれる) 

蕨の成長した後の葉は切れ難く、無理に引き抜こうとすると手を酷く切るということ。
⇒油断は禁物ということ。蕨の小枝は柔らかそうに見えていても、鋭いことから。




逆捩を食わせる(さかねじをくわせる)





慷概死に赴くは易く、従容義に就くは難し





鋳掛(いかけ)屋の天秤棒(てんびんぼう) 【鋳掛屋の天秤棒】

《鋳掛け屋の天秤棒は75寸あって普通6尺のものより長く、その端が荷より長く出るところから》出しゃばりな人、また、その行為のたとえ。




窈窕たる淑女は寤寐(ごび)にこれを求む

関雎(かんしょ)  『詩経』「国風・周南」
関関(くわんくわん)たる雎鳩(しよきう)
河の洲に在り
窈窕(えうてう)たる淑女は
君子の好逑(かうきう)

参差(しんし)たる荇菜(かうさい)
左右にこれを流()
窈窕たる淑女は
寤寐(ごび)にこれを求む

これを求めて得ざれば
寤寐に思服す
悠なるかな悠なるかな
輾転反側す

参差たる荇菜は
左右にこれを采()
窈窕たる淑女は
琴瑟(きんしつ)これを友(した)しむ

参差たる荇菜は
左右これを(えら)
窈窕たる淑女は
鍾鼓(しようこ)これを楽しむ

寤寐 ごび 目覚めていることと眠っていること。
 「―の境にかく逍遥して居ると」〈漱石草枕
よい連れ合い。よい配偶者。「君子のとなるべき資格」〈漱石・坊っちゃん〉

あさざ【莕菜・荇菜】
リンドウ科の多年生水草。沼沢に自生する。葉は緑色の広楕円形で,地下茎から長い柄を出して水面に浮かぶ。夏,黄色の五弁花を水上に開く。若葉は食用。ハナジュンサイ。 [季] 夏。


関雎(くわんしょ)
   関関雎鳩 在河之洲
   窈窕淑女 君子好逑

   関関たる雎鳩(しょきゅう ミサゴ)は 河の州に在り
   窈窕たる淑女は 君子の好逑


 川の中洲で仲むつまじく和らぎ鳴くミサゴのように、
 しとやかな淑女はよい人のつれあいとなるべきである。


文字にするとどこが面白いものかと思うが、歌謡として若い男女の集まりの中で歌われたのだろうか。それとも農作業の中ででも歌われたのだろうか。川の中洲は誰にも邪魔されない二人だけの場所でもある。若い者のや憧れ夢であったのかもしれない。

   参差荇菜 左右流之
   窈窕淑女 寤寐求之
    求之不得 寤寐思服
   悠哉悠哉 輾轉反側


  参差(しんし)たる荇菜(こうさい)は 左右に之を流(もと)む
  窈窕たる淑女は 寝床(ごび)に之を求む
  之を求めて得ざれば 寤寐に思服す
  悠なる哉 悠なる哉 輾轉反側す



窈窕たる淑女 は当時の男達の理想だったのか。
「窈窕(えうてう)」とは美静貞淑の徳を持っていて奥ゆかしくしとやかなさま
「淑」は「善」、「女」は「乙女」で、「淑女」とは「善い娘」
寝ても覚めても思い求め、思い悩み、
思いがはるかに遠くはせまとまらず、寝返りを打って悩んでいるよ。

「美しく、もの静かで、上品でみさおが固く、奥ゆかしく、しとやかな善い娘」か…。
今の若者なら「かわいくて、明るく、元気で、話しやすい娘」が人気がありそうなものだが。

そういえば高校生の頃二人の友人とクラスの女子の品定めをしていたことがある。
実際に一番女生徒に人気もあり、付き合っている彼女もいたのに、T君は「ようちょうたるしゅくじょ」を理想としていたように思える。「Uさんが一番理想だが、顔がな…。」などと、完全に揃った女性はいないものだなと溜息をついていたのを思い出す。彼は何事にも求道者のような言い回しをする高校生だった。

今の若者ならずとも、
実際にこのような女性が目の前にいたら、どうしよう。
何を話そうか。息が詰まるのではないか。
などと、自分に自信がないものだから、「やっぱり気楽に話せる娘がよいわ。」
となりそうだ。
内省的な現代人は「窈窕たる淑女」を既にあきらめているのか。

もう一つ。
水辺を散策し、水鳥や、川岸の草花に心動かされるような歳になると、
自分も川の中洲で楽しげに和らぎ鳴くミサゴのように淑女とつれそいたいとか、長短く入り乱れて揃わぬ水草のアサザを択んでとるように己にふさわしい人を選んで配偶者として娶りたいなどという言葉が、比喩技巧としてでなく、人の姿や息づかいのように聞こえてくる。3000年の昔の人と同化したような気になるのだ。

  参差荇菜 左右采之
  窈窕淑女 琴瑟友之
  参差荇菜 左右芼之
  窈窕淑女 鐘鼓楽之

  参差(しんし)たる荇菜(こうさい)は 左右に之を采(と)る
  窈窕たる淑女は 琴瑟之を友とせむ
  参差(しんし)たる荇菜(こうさい)は 左右に之を芼(えら)ぶ
  窈窕たる淑女は 鐘鼓之を楽しまむ

窈窕たる淑女を恋い慕い、思いの通ぜぬことをおそれて思い悩み、転々反則する様を咏じていたのが、既に恋慕の情が彼女に通じ、好みを為して、琴を弾じ瑟を奏して、共に友と親しむことのになり、やがて結婚して家庭の団らんを楽しむに至る喜びを咏じている。 
  

「関雎」は、「君子」「淑女」とあるから一般庶民の男女の恋情を主としたものではなく、上流貴族社会のことが背景にあるらしい。 
 訳者の高田眞治博士は「若き日の文王(西伯)が美しい賢女の太姒を想いこれを娶るに至ったことを咏じたしである」と推測している。
 色々な説があると言うことは要するに分からないのであろう。したがって我が儘な私は、きっと諸国の民謡になぞらえて誰かが改作したものであろう、と思うことにした。

 管弦に合わせて歌ったもの。(詩経 上(周南1)  しとやかないい娘  「関雎」)





臍の緒引き摺る(へそのおひきずる) 

 臍の緒を切ることなしにそのまま引き摺っている。生まれた時のままで、少しも進歩していないことの喩え。

「摺動する箇所なので潤滑材を塗布する」

設計関係ではよく使われる言葉と思います。
しかし、変換はできないし、辞書にも載っていない。
なんでそんな漢字がよく使われているのか、不思議なものです。

<摺動の読み方>

これは、

「しゅうどう」

と読みます。
変換は、「しゅう」と「どう」で別々にやりましょう。
一度やると次からは一発です。何でもそうですが。

<摺動の意味>

これは、

「すべって動く」

という意味になります。
ようは「動くところ」という意味ですね。
エアコンの口が上下に動きますが、そこの軸が摺動部と言われます。

摺動性のために、と設計ではよく言われますが、
これは「動くところなので、動きを良くするために」という意味です。
こんな長ったらしい言葉を「摺動性」と簡単に言うことができるので、
便利な言葉ではあります。

意味ブロ - ちょっと難しい言葉の意味まとめ
http://whatimi.blog135.fc2.com/blog-entry-105.html



勧学院の雀は蒙求を囀る(かんがくいんのすずめはもうぎゅうをさえずる)

勧学院にすむ雀は,学生が「蒙求」を習うのを聞いて,それをさえずる。日常慣れしたしんでいることは自然に覚えるというたとえ。門前の小僧習わぬ経を読む。


音読み    テン
訓読み    さえず(る)



枇杷と焼き魚を一時に食うべからず  

 食い合わせ




嘉善の和は、一味に取るにあらず

五味倶全「五味」というのは、酸、甜、苦、辣、鹹が五味。「五味倶全」(五味ともにそろう。関漢卿『竇娥冤「第二折」』など)ということは、調理が五味の特色を活かして整っていること。味の感性のバランスがいいこと。しかし老子は「五味は人の口をして爽(たがわ)しむ」(『老子「一二章」』から)といって、味数が多いことは味を失わせると説く。味覚は限りなく熟成していくものだから、調理の業もまた限りなく多彩になっていくだろう。極まったとき、「嘉膳の和は一味を取るにあらずや」(『中論「治学」』から)ということになるかもしれない。




藜羹を食らう者は大牢の滋味を知らず れいこうをくらうものはたいろうのじみをしらず

〔「大牢」はすばらしいごちそうの意〕
粗食に慣れているものは,すばらしいごちそうの味がわからない。いやしい人間には高尚なことは理解できないことのたとえ。




駕籠舁き駕籠に乗らず かごかきかごにのらず

常に取り扱っていながら,自分のためには使用しないことのたとえ。他人のためにはかるばかりで自分の事には手が回らないこと。

か・く【×舁く】   
[動カ五(四)]
1 (二人以上で)物を肩にのせて運ぶ。かつぐ。「駕籠(かご)を―・く」
2 だます。あざむく。
「こんなものを餌(ゑば)にして、―・かれるやうな科(とが)はしねえは」〈洒・二筋道〉
[可能]かける
 



花中の鶯舌は花ならずして芳し

周囲の環境がよいと、その中にいるものも、それに染まって自然によくなることのたとえ。
・花の中で鳴く鶯(うぐいす)の声は、花が匂うように美しく感じられるという意から。
類義 :「芝蘭(しらん)の室に入る如し」

鶯舌 おうぜつ




羝羊の藩に触る

「羝羊(ていよう)の藩(まがき)に触るる」は「羝羊触藩」(ていようしょくはん)と四字熟語で覚えましょう。「まがきに突っ込んで角をひっかけた牡羊のように動きが取れない、つまり、自ら墓穴を掘って藻掻き苦しむさま」。これ「易経」に出てくる結構有名な成句なんです



考えと続飯(そくい)は練るほど良い

続飯は飯粒を練って作ったもの。

続飯はよく練った方がくっつきがよい。

考えもおなじで、練れば練るほどよくなるものだ。

性急な答えを求められても、ちょっとの間をおいて、

もう一度考えをチェックしたいものだ。




苫に寝て土塊を枕とす
とま ×苫/×篷】
 
(すげ)や茅(かや)などを粗く編んだむしろ。和船家屋を覆って雨露をしのぐのに用いる。



翠は羽を以て自ら残なう  (すいははねをもってみずからそこなう)

 長所やすぐれた才能が、かえってわざわいを招くもとになることのたとえで、かわせみは美しい羽を持っているためによく捕まえられて殺される意味から。「翠」かわせみ。羽の色が青く美しい水辺の鳥。




毀誉褒貶相半ばす (きよほうへん あいなかばす)
世間の評判と言うものは、褒める人もいればけなす人もおり、評価は半分に割れるものだ、という意味。



疏食を飯い水を飲み、肱を曲げてこれを枕とす(そしをくらいみずをのみひじをまげてこれをまくらとす)

 そまつな食事をし、水を飲み、肱を曲げて枕にして眠る。自分に適合した生活の中で、正しい道をはずさずのびのびと生きることの中に楽しみがあり、人の本来の生き方があるのである。
語:疏食=そまつな食事。


そ     【×疏】  

[人名用漢字] [音]ソ(漢) ショ(呉) [訓]うとい うとむ さかん
1 水路を分けて通す。「疏水・疏通」
2 関係が分け離れる。うとくなる。「疏遠」
3 粗末な。「疏食(そし)」
4 事柄の筋を分けていちいち説明する。「疏明/弁疏」
5 注釈をさらに細かく説き明かしたもの。注の注。「義疏(ぎそ・ぎしょ)・注疏」
6 箇条に分けて書く。また、その書状。「上疏・奏疏」
◆1~3は「疎」と通用する。




一髪千鈞を引く  いっぱつせんきんをひく

〔韓愈「与二 孟尚書一 書」〕
ひとすじの髪の毛で千鈞の重さのものを引く。いつ切れるかわからないことから,きわめて危険なことのたとえ。




辛崎の松は花より朧にて(からさきのまつははなよりおぼろにて)

 湖水一面朧に霞みわたる中、湖岸の辛崎の松は背後の山の桜よりさらに朧で
風情が深いものだ。

 「かな」などの切字を用いず、湖水朦朧とした実感をだすのに「にて」と和
らげて巧みに余情の効果を出している。詩的開眼につながる一句である。

「辛崎の松」は辛崎の一つ松で歌枕であり、琵琶湖の西岸、大津の北四キロに
あって、近江八景の一つである。
「花」は具体的には古歌に名高い長良山の山桜である。




大姦は忠に似たり  たいかんはちゅうににたり 〔宋史 呂誨伝〕


大姦(大奸)は自分の本性を隠して現さず,君主に取り入るようにつとめるから,まるで忠臣のように見える。




大廈の材は一丘の木にあらず たいかのざいはいっきゅうのきにあらず〔王襃「四子講徳論」〕

大建築物を造るには,一つの丘の材木だけでは足りない。大事業は必ず大勢の力によるもので,決して一人の力ではできないものである。




大行は細謹を顧みず  たいこうはさいきんをかえりみず

〔史記 項羽本紀〕
大事業を成し遂げようとする者は,ささいなことにこだわらずに事を行う。 〔「細謹」はささいな礼義の意。「細謹」を「細瑾」(=ささいな欠点)と書く場合もある〕




好んで酒を飲むべからず。微醺にして止むべし

微醺(びくん)
ほんのりと酒に酔うこと。ほろよい。微酔。「―を帯びる」


故事成語 目次

故事・諺①(新星出版社より)
鷸蚌の争い  綸言汗の如し  兄弟牆に鬩げども外その務りを禦ぐ  華胥の国に遊ぶ  の人、何ぞ算うるに足らんや   焙烙千に槌一つ  飽かぬは君の御諚  阿漕が浦に引く網  飴を舐らせて口をむしる

故事成語②(新星出版社)より
瑾瑜は瑕(きず)を匿(かく)し、 
国君は垢(はじ)を含む   両葉去らずんば斧柯を用うるに至る   凱風南よりして彼の棘心を吹く   槿花一朝の夢   倹約と吝嗇(りんしょく)は水仙と葱(ねぎ)   端倪すべからざる    瑾瑜は瑕(きず)を匿(かく)し、 
国君は垢(はじ)を含む   三十の輻(ふく)、一つの轂(こく)を共にす。その無に当たりて、車の用あり。 

故事成語③ (新星出版社)
良賈(りょうこ)は深く蔵(ぞう)して虚(むな)しきが如(ごと)し  人の牛蒡で法事する  舐犢の愛   合羽着て撫でても見たき柳かな   まず黍(キビ)を喰らい、後に桃を喰らう   玉を食らい桂を炊ぐ   杵で当たり杓子で当たる   身体髪膚これを父母に受くあえて毀傷せざるは孝の始めなり   朝鳶に蓑を着よ、夕鳶に笠をぬげ    猫の歯に蚤

故事成語④ (新星出版社)
内踝は蚊に食われても悪い  蚊のまつげに巣くう  蚤虱馬の尿する枕もと   命は鴻毛より軽し  不遜にして以て勇と為す者   呉牛月に喘ぐ  芻蕘に詢る  山の芋鰻とならず  一粲を博す  勝地定主無し  
普天の下率土の浜  親父の夜歩き、息子の看経  上古は結縄して治まる   尺牘の書疏は千里の面目なり  


故事成語⑤(新星出版社)
蕨の榾で手を切れば骨まで切れる  逆捩を食わせる  慷概死に赴くは易く、従容義に就くは難し   鋳掛(いかけ)屋の天秤棒(てんびんぼう)   窈窕たる淑女は寤寐(ごび)にこれを求む   臍の緒引き摺る    勧学院の雀は蒙求を囀る   枇杷と焼き魚を一時に食うべからず   嘉善の和は、一味に取るにあらず    藜羹を食らう者は大牢の滋味を知らず   駕籠舁き駕籠に乗らず   花中の鶯舌は花ならずして芳し   羝羊の藩に触る   考えと続飯(そくい)は練るほど良い    苫に寝て土塊を枕とす    翠は羽を以て自ら残なう    毀誉褒貶相半ばす       疏食を飯い水を飲み、肱を曲げてこれを枕とす    一髪千鈞を引く    辛崎の松は花より朧に   大廈の材は一丘の木にあらず   大行は細謹を顧みず   好んで酒を飲むべからず。微醺にして止むべし

故事成語⑥(新星出版社)

平成20年第3回

平成21年第1回 平成20年第3回
九仞の功を一簣に虧く 積毀骨を銷す 

平成21年 第3回

漢検1級 故事成語 22年度 詳説

漢検1級 故事成語 平成23年度の問題で難しかった所

平成24年第1回

平成24年 第2回

24年第3回

平成25年 第2回 第1回問題より
手臂終に外に向かって曲げず  食前方丈一飽に過ぎず  衆口金を鑠し、積毀骨を銷す   勝地定主無し   田鼠化して鶉と為る   朽索の六馬を馭するが如し   白頭新の如く、傾蓋故の如し   芻蕘に詢る  

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