2014年5月16日金曜日

漢検1級 故事成語 22年度 詳説


平成22年第3回

切羽(はばき)する

《「切羽」も「」も、刀剣の鍔元(つばもと)の金具の名。刀に手をかけて談判するところから》ひざづめ談判をすること。






大匠は拙工の為に縄墨を改廃せず
  (たいしょうはせっこうのためにじょうぼくをかいはいせず)

 教育の標準は、学ぶ者が付いていけないからといって、程度を下げることはしないたとえで、大工の棟梁は、未熟な大工のために、すみなわを引く方法を変えたり、引くのをやめたりすることはないという意味から。「縄墨」すみなわ。大工が木材などに線を引くのに使う道具。

このことわざの出典

 

孟軻 『孟子』
大工の棟梁は、下手な職人が縄墨が扱いにくいなどと言っても、そのために使い方を変更したりはしないものだ。


 縄墨(じょうぼく)とは、材木に寸法の印をつけるために用いる道具。横たえた材木の上に墨のついた糸を 張り、それを弾いて木に叩きつけることで線の跡を残します。定規などで代用できないこの道具の素晴らしい特徴は、糸を弾くときに角度や捻りを加えること で、若干湾曲した線を描くことができることです。名人が行えば、しなった材木をタテに等分する緩い曲線を自在に描くことができるわけですが、この道具をそ こまで操るには、やはりたいへんな年季が必要とされるそうです。

 上の一節は、修練が必要な技術を伝授するにあたって、目先の困難を回避するために安きに流れることの愚 を説いています。何らかの技術を教授する際、その習得が難儀だからという理由で部分的に程度の低い代案を組み込むことは、たいていの場合よい結果を生みま せん。頑なに最上級のテクニックを強要すべきという意味ではもちろんありません。十分に吟味して最適な代案を用意するのと、うわべだけ似せて安易に面倒を しのぐことは、まったく別物だということです。


甘瓜苦蔕(くてい)を抱く。

苦蔕】甘い瓜でもへたは苦い。完全無欠なものはない。
これも「辞典」にありませんし、「成語林」にも載っていません。全く知らない故事諺でした。ネットでの情報だと、「故事成語名言大辞典」には載っているようで、「蹄窪の内、蛟竜を生ぜず」22-2Kに引き続き、この辞典からの出題です。以前は、故事諺は、「成語林」から沢山出題されていたように思うのですが、出題者の宗旨替えでしょうか。

 問題については、甘瓜と「くてい」が対になっていること、甘いの反対語は苦い、瓜の対は蔕(へた)13-3K 18-3Kですので何とかわかりました。蔕の音読みは、テイだったかな? タイだったかな? と思いましたがどちらもあるのですね。

 蔕の音読み熟語としては、
 人生こんてい(根蔕(底・柢))無く、飄として陌上のちりのごとし 9-3K=征116
が出題されています。私は、複数の漢字があるときは、なるべく簡単な漢字で書ければいい、これは、根底でいいと思っていました。ただ、根蔕と書けるようにしておくと、蔕の音読みにテイがあることがすぐわかるのでしょう。尤も、蔕の見出し語には、 【芥蔕(かいたい)】もあり、タイとテイの読み分けは難しそうです。



奔車の上に仲尼無く、フクシュウ(覆舟)の下に伯夷無し
(ほんしゃのうえにちゅうになく、ふくしゅうの下にはくいなし)

[「仲尼」は孔子の字「伯夷」は殷の末、周の初めの賢者で潔白な人の名]ものすごい勢いで奔る車の上では聖人といわれる孔子でも そうそう謹厳にしていら れるものでもないし 転覆した舟の下では 人格高邁で名高い伯夷といえども そうそうとりすましてはいられない、ということから 危難が身にふりかかるお それのある国からは 聖人も賢人もいなくなるということのたとえ 出典:韓非子.安危

動くこと雷霆(らいてい)の如し

「疾如風、徐如林、侵掠如火、不動如山」の句は、『孫子』・軍争篇第七で、軍隊の進退について書いた部分にある文章を、部分的に引用したものである。すなわち、

「故其疾如風、其徐如林、侵掠如火、難知如陰、不動如山、動如雷霆。」

(故に其の疾きこと風の如く、其の徐(しず)かなること林の如く、侵掠(しんりゃく)すること火の如く、知りがたきこと陰の如く、動かざること山の如く、動くこと雷霆(らいてい)の如し)

20110216

「発如鏃矢」って?

またまた漢検の話に戻りますが・・
22
年度第3回1級 故事成語の次の問題について。

問題: 発すること鏃の如く、動くことライテイの如し。

解答: 雷霆

「動くこと雷霆の如し」は、『孫子』軍争篇にある言葉です。

 其疾如風、其徐如林、侵掠如火、不動如山、
 難知如陰、動如雷霆。
 
 其の疾(はや)きこと風の如く、其の徐(しず)かなること林の如く、
 侵掠すること火の如く、動かざること山の如く、
 知り難きこと陰の如く、動くこと雷霆(らいてい)の如し。

【意味】
 移動するときは風のように素早く、様子をうかがうときは林のように静かに、
 攻撃するときは火のように激しく、守りを固めるときは山のようにどっしりと構えて、
 行動の知り難さは暗闇のように何も分からず、行動を起こすときは雷のように突然に。


それで、漢検の問題文にある「発すること鏃矢の如く」は、
一体どこの(誰の)言葉なのでしょう・・。
 (先週末せっかく図書館へ行ったのに調べるのを忘れた~)

訳すとすれば、「矢を放つときは鏃(やじり)のように鋭く」かな。
(なんかヘン?)

ちなみに、鏃矢の読みはゾクシだと思いますが、
漢字源には「矢鏃(シゾク)」と載っていました。

10.発すること鏃矢の如く、動くこと【ライテイ】の如し。
 【雷霆】意味不明のことばです。鏃矢(ぞくし)は、するどい矢。雷霆(らいてい)は、雷の響き。
 突入するときはするどい矢のように、動くときはすさまじい雷のように、とでも訳そう。
 古典の一節と思われる。水滸伝か?ま、とにかく直感と推理力も必要だな。動くこと雷霆のごとし、と覚えよう。
 「霆」は「テイ、いなずま」。ほかの熟語には、
 【霆撃】(テイゲキ )いなずまのように一気に攻撃する。
 【疾霆】(シッテイ )にわかに鳴る雷。

新潟漢字同好会




平成22年 第2回

縲絏の辱め
縲絏・縲紲 るい せつ
〔「縲」は黒縄,「絏」「紲」はしばる意〕
罪人をしばる縄。また,獄につながれること。
  -の辱めを受けて獄中にあるや/妾の半生涯 英子



蹄窪の内、蛟竜を生ぜず

【蹄窪】テイワ 牛馬の足跡のくぼんだところ。
蹄窪之内不生蛟龍  牛馬の蹄跡の窪んだ所には蛟龍は生じない。小さな土地には大人物は出ないたとえ。 <出典、新論・觀量>

そしてこの後続く言葉が、
培塿之上、不植松柏
培塿(ほうろう)の上、松柏を植えず。 広漢和辞典(下巻)・大修館書店
部婁(ほうろう)には松柏無し。  
 狭苦しいこせこせしたところには大人物は育たないということのたとえ。こちらの出典は「春秋左氏伝」です





平成22年 第1回

一籌を輸する いっちゅうをゆする

 〔「輸」は移す意。籌を相手に渡すという意味から〕
数取り一つだけ負ける。ちょっと劣る。

中国の明の喬宇(きょうう)が嵩山(すうざん)(河南省にある聖山)に登った
ときの帰路、登れなかった友人に対して「若(なんじ)我に一籌を輸せり(=君はちょうっとの差で私に負けたね)」と言ったと言う故事に基づくそうだ。

田山花袋の山水小記の中に「一籌(いっちゅう)を輸()する。」という文が出てきた。日本国語大辞典で調べると、「一段階劣る。他人より劣る。おくれをとる。一着を輸する。」 「一籌」は「一つの計画、はかりごと。(転じて)技能などが、他の人よりすぐれていること。」 「輸する」は「負ける意。」


焼け野の雉夜の鶴  やけののきぎすよるのつる

 巣のある野を焼かれると雉子(きじ)は身の危険を忘れて子を救い,寒い夜,巣ごもる鶴は自分の翼で子をおおう。子を思う親の情が非常に深いたとえ。

故事成語 目次

故事・諺①(新星出版社より)
鷸蚌の争い  綸言汗の如し  兄弟牆に鬩げども外その務りを禦ぐ  華胥の国に遊ぶ  の人、何ぞ算うるに足らんや   焙烙千に槌一つ  飽かぬは君の御諚  阿漕が浦に引く網  飴を舐らせて口をむしる

故事成語②(新星出版社)より
瑾瑜は瑕(きず)を匿(かく)し、 
国君は垢(はじ)を含む   両葉去らずんば斧柯を用うるに至る   凱風南よりして彼の棘心を吹く   槿花一朝の夢   倹約と吝嗇(りんしょく)は水仙と葱(ねぎ)   端倪すべからざる    瑾瑜は瑕(きず)を匿(かく)し、 
国君は垢(はじ)を含む   三十の輻(ふく)、一つの轂(こく)を共にす。その無に当たりて、車の用あり。 

故事成語③ (新星出版社)
良賈(りょうこ)は深く蔵(ぞう)して虚(むな)しきが如(ごと)し  人の牛蒡で法事する  舐犢の愛   合羽着て撫でても見たき柳かな   まず黍(キビ)を喰らい、後に桃を喰らう   玉を食らい桂を炊ぐ   杵で当たり杓子で当たる   身体髪膚これを父母に受くあえて毀傷せざるは孝の始めなり   朝鳶に蓑を着よ、夕鳶に笠をぬげ    猫の歯に蚤

故事成語④ (新星出版社)
内踝は蚊に食われても悪い  蚊のまつげに巣くう  蚤虱馬の尿する枕もと   命は鴻毛より軽し  不遜にして以て勇と為す者   呉牛月に喘ぐ  芻蕘に詢る  山の芋鰻とならず  一粲を博す  勝地定主無し  
普天の下率土の浜  親父の夜歩き、息子の看経  上古は結縄して治まる   尺牘の書疏は千里の面目なり  


故事成語⑤(新星出版社)
蕨の榾で手を切れば骨まで切れる  逆捩を食わせる  慷概死に赴くは易く、従容義に就くは難し   鋳掛(いかけ)屋の天秤棒(てんびんぼう)   窈窕たる淑女は寤寐(ごび)にこれを求む   臍の緒引き摺る    勧学院の雀は蒙求を囀る   枇杷と焼き魚を一時に食うべからず   嘉善の和は、一味に取るにあらず    藜羹を食らう者は大牢の滋味を知らず   駕籠舁き駕籠に乗らず   花中の鶯舌は花ならずして芳し   羝羊の藩に触る   考えと続飯(そくい)は練るほど良い    苫に寝て土塊を枕とす    翠は羽を以て自ら残なう    毀誉褒貶相半ばす       疏食を飯い水を飲み、肱を曲げてこれを枕とす    一髪千鈞を引く    辛崎の松は花より朧に   大廈の材は一丘の木にあらず   大行は細謹を顧みず   好んで酒を飲むべからず。微醺にして止むべし

故事成語⑥(新星出版社)

平成20年第3回

平成21年第1回 平成20年第3回
九仞の功を一簣に虧く 積毀骨を銷す 

平成21年 第3回

漢検1級 故事成語 22年度 詳説

漢検1級 故事成語 平成23年度の問題で難しかった所

平成24年第1回

平成24年 第2回

24年第3回

平成25年 第2回 第1回問題より
手臂終に外に向かって曲げず  食前方丈一飽に過ぎず  衆口金を鑠し、積毀骨を銷す   勝地定主無し   田鼠化して鶉と為る   朽索の六馬を馭するが如し   白頭新の如く、傾蓋故の如し   芻蕘に詢る  


 
 漢字検定 採点 変だ! 怒怒怒!! 令和2年1月20日


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