2014年4月22日火曜日

平成22年第1回 読み (1 − 10)


平成22年第1回 読み (1 10

1) 近世の俳論を【瀏覧】する。  【リュウラン】

【リュウラン】=通覧すること。目をとおすこと。「劉覧」とも書く。
「瀏」の読みは、「リュウ、きよい」。

他の熟語は、
【瀏亮】(リュウリョウ )=瀏喨。 きよく明らかなさま。音がさえてほがらかなさま。
【瀏瀏】(リュウリュウ ) 風の速くふくさま。



2) 辺境【遐壌】に至るまで巡幸された。  【カジョウ】

【カジョウ】=遠く隔たった土地。
「遐」の読みは、「カ、とおい、はるか」。他の熟語は多くあるが、難しそうなものでは、

【遐陬】(カスウ)(カシュウ ) 中央からとおく離れたへんぴな土地。辺地。
【遐邇】(カジ ) とおい所と、近い所。遠近。
【升遐】(ショウカ ) 天子の死。崩御(ホウギョ)
【登遐】(トウカ ) 登って目的地につく。天子の死のこと。

行幸(ぎょうこう、みゆき)とは、天皇が外出することである。目的地が複数ある場合は特に巡幸(じゅんこう)と言う。
また、御幸(ごこう、ぎょこう、みゆき)と言う場合もあるが、これは上皇法皇女院に対しても使う。



3) 事例の【尠少】な現象である。  【センショウ】

【センショウ】=すくない。ほんの少し。「鮮少」とも書く。
「尠」の読みは、「セン、すくない」。「尠=鮮」とある。(大漢語林)
「セン」の音が読みにくいが、字通では尠と鮮は同声とあるので、鮮を連想すべし。(新鮮の鮮だから・・・)
他の熟語は、特になし。


4) 詩文に【刪潤】を加える。   【サンジュン】

【サンジュン】=詩文のよくないところを削り、足りないところを補うこと。
「刪」の読みは、「サン、けずる」。他の熟語は、類似のものが多い。

【刪修】(サンシュウ ) 不要な字句をけずり改めて、文章をよくする。『刪正(サンセイ)・刪節(サンセツ)・刪定(サンテイ)「修」は、形を整える。

なお、孔子が詩経をまとめたという孔子刪詩説から、
【刪詩】(サンシ ) 孔子が、従来伝わった三千余篇の詩のうち重複したものをけずり、礼儀にかなったものを残して、現在の三百余篇の「詩経」を編集したということ。司馬遷 の「史記」の孔子世家の記述に基づく。この説は一般に採用されたが、のち、唐の孔穎達(クヨウダツ)、宋の鄭樵(テイショウ)らによって、否定された。 (漢字源)



5) 中納言の【捐館】の事を録した。  【エンカン】

【エンカン】=(住みなれた居館を捐(す)ててこの世を去る意) 死去の尊敬語。

「捐」の読みは、「エン、すてる」。
意味は大きく次の3つ。
すてる(スツ)。のぞく。不要な部分をすてる。また、取りのぞく。〈類義語〉棄。「捐棄(エンキ)」「捐館=館ヲ捐ツ」「捐階=階ヲ捐ク」〔孟子〕
 
私財をだして人を助ける。「義捐金(ギエンキン)

私財をさいて官位を得る。「捐班(エンパン)(買官して役人となった者)

他の熟語は、
【捐官】(エンカン) 中国の制度で、財政不足を補うため人民に金銭または米穀を納めさせ、代りに官職・資格を授けたこと。捐納・捐輸ともいう。
【出捐】(シュツエン) 金品を寄付すること。



6) 【鎖鑰】を施した蔵に賊が侵入した。    【サヤク】

⇒【サヤク】=錠(じよう)と鍵(かぎ)。とざし。とじまり。
「鑰」の読みは、「ヤク、かぎ」。他の熟語は、
【鑰牡】(ヤクボウ ) かぎ。▽「牡」は、中につきこむかぎ。『鑰匙(ヤクシ)
【鍵鑰】(ケンヤク ) 筒型のじょうまえ。



7) 資本の流通に【壅塞】を来した。    【ヨウソク】

⇒【ヨウソク】=ふさぐこと。また、ふさがること。
「壅」の読みは、「ヨウ、ふさ‐ぐ」。

他の熟語は、
【壅遏】(ヨウアツ ) 行動をさえぎりとどめる。わく内に押しこめる。
【壅蔽】(ヨウヘイ )=壅敝。 わく内に押しこめて、外と隔てる。君主の耳をふさいで善言や真実を聞かせない。また、君主のそのような態度



8) 予々その【佼黠】が知れ渡っていた。    【コウカツ】

⇒【コウカツ】=悪がしこい。
「予々」は「かねがね」。「佼」の読みは、「コウ、うつく‐しい」。「黠」の読みは「カツ、わるがしこ‐い、さか‐しい」。

「黠」の熟語は、
【黠智】(カッチ ) 悪がしこい知恵。悪知恵。
【黠獪】(カッカイ ) 悪がしこい。ずるい。〈類義語〉狡獪(コウカイ)
【傑黠】(ケッカツ )=桀黠。 わる賢いこと。


かね がね [2] [3] 【予▽ 予▽・兼兼】
( 副 )
〔動詞「兼ねる」の連用形が重なった語〕
ある行為が以前から引き続いて何度も行われて現在に至っている意を表す。前々から。かねてから。 「御高名は-承っておりました」



かね て [1] 【予▽て】
〔動詞「兼ねる」の連用形に助詞「て」が付いたもの〕
一 ( 副 )

過去のある時点に経験または認識されているさま。前もって。以前より。あらかじめ。 「 -御案内申し上げましたように」 「 -婚約中の二人」 「 -からの懸案事項」

(名詞的に用いて)ふだん。平生。 「 -は猛く見えしひとびとも/増鏡 新島守」
二 ( 連語 )
(上の語句を受けて)…以前。…前に。 「二,三日-,大殿に,夜に隠れて渡り給へり/源氏 須磨」



9) 民衆の間から【懽呼】の声があがった。    【カンコ】

⇒【カンコ】=歓呼。 よろこんで声をあげること。
「懽」の読みは、「カン、よろこ‐ぶ」。



10)【左袵】蟹文の風を蔑んだ。   【サジン】

⇒【サジン】=左衽。衣服をひだりまえに着ること。中国では右衽を中華の風とし、左衽を夷狄の習俗であるとした。
「袵」の読みは、「ジン、ニン、おくみ、えり」。

「蟹文」は「かいぶん」と読み、意味と用例は、日本国語大辞典では、
「かいこうぶん(蟹行文)」に同じ。
*近世紀聞〔1875~81〕〈条野有人〉「左袵蟹文(カイブン)の風を学び夷邦の管轄となるに至らば」
⇒「蟹行文」は「横書きの文章、欧米の文章、書物。蟹文(かいぶん)。」(日本国語大辞典)のことだそうです。なるほど、蟹の横歩きからできた言葉のようで面白い表現だ。これからは横書きの文章を「蟹行文」と呼ぶことにしようか。

べつ     【蔑】  

[常用漢字] [音]ベツ(漢) [訓]さげすむ ないがしろ


ばかにする。無視する。「蔑視・蔑称/軽蔑・侮蔑」

cf) さ‐たん【左×袒】
[名](スル)《「袒」は衣を脱いで肩をあらわにする意で、中国、前漢の功臣周勃(しゅうぼつ)呂氏(りょし)の乱を鎮定しようとした際、呂氏に味方する者は右袒せよ、劉氏(りゅうし)に味方する者は左袒せよ、と軍中に申し渡したところ全軍が左袒したという「史記」呂后本紀の故事から》味方すること。

「何としても上方の者に―する気にならぬ」〈福沢福翁自伝〉
[補説]「左担」と書くのは誤り。

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