2014年4月18日金曜日

平成22年第3回  読み 2の3(11−20)


平成22年第3回  読み 2の3(1120

11)日夜黽勉して倦むところがない。  びんべん

 びんべん ×黽勉/××俛】

 [名](スル)つとめはげむこと。精を出すこと。
 「よく努めて忽ち世の認むるところとなった」〈里見・今年竹〉


12)譴責されて俛首流涕する。 ふしゅ 

俛首帖耳(ふしゅちょうじ)」
意味は、
頭下げ耳を垂れて相手のご機嫌を取り、追従し同情をひくこと。
韓愈の言葉より出典




13)領主の裔冑を名乗る者があった。  えいちゅう

えいちゅう

裔(あとつぎ)
胄(よつぎ、ちすじ)

(よつぎ)と(かぶと)は別字。

よくみると、月の横線の長さが違う

胄(よつぎ)は月だが、冑(かぶと)は冂(どうがまえ)。

但し書き取りでカブトを書く時、胄と書いても許容。




14)許多の罪咎を犯していた。  ざいきゅう

【罪咎】H22-3
(ザイキュウ) つみとが。罪科。
「咎」の読みは「キュウ、とが」。キュウが読みにくいね。

広辞苑で、ほかには、
【罪咎】(ザイキュウ) つみとが。罪科。

【追咎】(ツイキュウ) 事のすんだ後になってとがめること。

【盈満の咎】(えいまんのとがめ) 物事が満ち足りている時は、かえって災いが生じやすいから、栄華に驕り高ぶるなとのいましめ。

あま た [1] 【〈数多〉・〈許多〉】

( 副 )
名詞的にも用いる)
数が多いさま。たくさん。多数。 「 -の犠牲者出した」 「引く手-」 「女御更衣-さぶらひけるなかに/源氏 桐壺
程度甚だしいさま。たいへん。非常に。 「たぶてにも投げ越しつべき天の川隔てればかも-すべなき/万葉集 1522」 〔「あまる」 「あます」などの語幹と同じ語源の「あま」に接尾語「た」の付いたものという〕

きょ た [1] 【許多・巨多】

( 名 ・形動[文] ナリ
数の多いこと。たくさんあること。また,そのさま。こた。 「爵位を願ふもの甚だ-にして/花柳春話 純一



15)蒐集した美術品を糶売にかける。  ちょうばい

【糶売】H22-3
(チョウバイ) せりうりすること。糶糴売買(ちようてきばいばい)。
【糶】(チョウ) 米を物色して売りに出す。
  【糴】(テキ) 米を物色して買い入れる。

この二つは字体が似ているが対義語。米が出たり入ったりでチョウテキ、と覚えよう。




16)酪漿と乳醋酒で渇きをいやした。  らくしょう

  らくしょう【酪漿】 牛などの乳汁。

  す【酢・醋】 酢酸を含む,すっぱい液体調味料。古来,酢酸菌による酒の発酵によって作った。米・果実など原料によって風味が異なり,合成酢もある。殺菌力・防腐力が強い。食酢。 -漬け」 「三杯-」 酢酸(さくさん)


 李陵にとって奇異な生活が始まった。家は絨帳(じゅうちょう)穹盧(きゅうろ)、食物は羶肉(せんにく)、飲物は酪漿(らくしょう)と獣乳と乳醋酒(にゅうさくしゅ)。着物は狼(おおかみ)や羊や熊(くま)の皮を綴(つづ)り合わせた旃裘(せんきゅう)。牧畜と狩猟と寇掠(こうりゃく)と、このほかに彼らの生活はない。一望際涯(いちぼうさいがい)のない高原にも、しかし、河や湖や山々による境界があって、単于(ぜんう)直轄地(ちょっかつち)のほかは左賢王(さけんおう)右賢王|左谷蠡王(さろくりおう)右谷蠡王以下の諸王侯の領地に分けられており、牧民の移住はおのおのその境界の中に限られているのである。城郭もなければ田畑もない国。村落はあっても、それが季節に従い水草を逐()って土地を変える。李陵

 中島敦の文章は晦渋ではないが、上記『李陵』の冒頭にしろ、「天漢二年とはいつなのか」「騎都尉とはいかなる身分であるか」「遮虜鄣とはいずこにあるか」という説明は微塵もない。この方法は現代では通用しにくいだろう。誰も読まなくなる。

 和漢の古典が持つ異様な密度は、この種の省略に依るところが大きい。冗長な、つまり他書——辞書に代表される——に記載されている事物については筆を費やさぬ。これを作者の傲慢というのは簡単だが、実行するには勇気が要る。「自分の文章を読んで理解してほしい」という世俗的な、しかし一般的な欲求に反する行為だからである。

 忖度するに、古典作者の態度は論文執筆者のそれと同じように見える。論文においては、事実と、そこから導かれる論旨が本題である。それを論ずるに必須の要素は登場するが、余分な記述は捨てられる。既に書かれた情報は、当然知っているものとして扱われる。読みたい者だけ読め、わからなければ調べろ、勉強しろ、考えろという姿勢である。論文が示すこの態度は、読者が同業者であるという大前提に立っているわけだが——、そのような尊大な日記があっても良いのかも知れぬ。

 漢籍の描写についても簡単に触れておく。漢字という表意文字を駆使することにより、描写に要する文字数が劇減し、結果行間が濃密になる。論文で専門用語や略語が縦横に使われるのと似ている。だがやはり、attitude と同様の問題も孕む。「家は絨帳穹廬、食物は羶肉、飲物は酪漿と獣乳と乳醋酒」(『李陵』) と書かれても匈奴の生活を具体的に想像することは難しい。

 極まった文筆を理解するには読者にも努力が要求される。これは一種秘教的な考えであり、オカルトに近くもあるが、それゆえに魅力的でもある。




17)宮室を卑しくして力を溝洫に尽くす。  こうきょく

【溝洫】H22-3
(コウキョク ) 田畑の間にあるみぞ。「卑宮室、而尽力乎溝洫=宮室ヲ卑シクシテ、力ヲ溝洫ニ尽クス」〔論語〕灌漑(カンガイ)
「洫」の読みは「キョク、みぞ」。この字の熟語は溝洫だけ知っていれば十分、と見たぞ。

【洫】 9画 6) 1

[音]
キョク

ケキ
[訓]
みぞ


ほり


《意味》
みぞ。田畑の外わくをなすみぞ。田畑の通水路。

【洫】みぞ
田畑をうるおすために巡らされた用水路。

【溝洫】こうきょく
田畑の間にあるみぞ。また、灌漑
「卑宮室、而尽力乎溝洫=宮室を卑しくして、力を溝洫に尽くす」・・・[]宮室は質素にして、灌漑工事には労力・費用を惜しまない(禹王の政治をほめる論語の孔子の言葉)。

《字源》
声符は「血(けつ)
血管のように田畑の間をめぐる溝を表す。



18)仏寺は古村里の庠序なり。   しょうじょ

【庠序】
(ショウジョ ) 中国古代の学校。『庠校(ショウコウ)』「謹庠序之教、申之以孝梯之義=庠序ノ教ヘヲ謹ミ、コレヲ申ムルニ孝梯ノ義ヲモッテス」〔孟子〕

「庠」の読みは「ショウ、まなびや」。ショウが読みにくい。意味は、
「まなびや。学校。「孟子」滕文公篇上に「夏曰校、殷曰序、周曰庠=夏ニハ校ト曰ヒ、殷ニハ序ト曰ヒ、周ニハ庠ト曰フ」とある。〈類義語〉序。「邑庠(ユウショウ)(県の学校)」「郡庠(グンショウ)(郡の学校)」「庠序之教(ショウジョノオシエ)(学校の教育)」」

「庠」の熟語は、この「庠序」だけ覚えれば十分だな。



19)鴃舌の人、先王の道を非とす。  げきぜつ

【鴃舌】
(ゲキゼツ ) もずの鳴き声。転じて、異民族の、やかましいだけで、意味の通じないことばのたとえ。「南蛮鴃舌之人」〔孟子〕

「鴃」の読みは「ゲキ、ケツ、もず」。「ケツゼツ」の読みも正解だろう(日本国語大辞典) これもこの熟語だけ覚えれば十分だな。ついでに同じ意味の「南蛮鴃舌」の四字熟語も覚えよう。

侏離鴃舌」という四字熟語もあるが漢検四字熟語辞典には載っていないので試験にはまず出ないのだろう。この「侏離」の意味は、
【侏離】(シュリ )中国西方に住む民族の音楽。転じて、意味の不明な外国語をいうことば。


先王の道を修めた「豪 傑の士」(『孟子』滕文公篇)。『孟子』から

解釈が難しい。「外国人(鴃舌の人)が、中国の先王の道を違う、と言った、という意味だろうか。(著者)

 


20)山巓山腹白雪皚皚たり。   がいがい

22-③ 山巓山腹白雪皚皚たり。

17-② 山巓山腹白雪皚皚たり。

伊藤忠太「建築哲学」より

文章問題が読みの問題になっていた例。

山頂も山裾も雪で真っ白です。


がい‐がい【××皚】
[ト・タル][文][形動タリ]雪や霜で辺り一面が真っ白く見えるさま。
「―たる雪の中の一つの別れ」〈長与・竹沢先生と云ふ人〉


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謝辞
 このブログは、自分のお勉強のために作ったものです。あちらこちらのホームページやブログから気に入った記事をコピーペーストとして作ったものです。作る過程で非常に勉強になりました。
 とにかく分からないことだらけですので、自分なりに大量にいろいろな記事を使っております。それらの記事をお書きになった各位には本当に感謝しております。
 特に新潟漢字同好会様のブログ http://nkd-dogu.blogspot.jp の記事を多く参考にさせて戴きました。改めて感謝申し上げます。
 また、One On One 様、めざせ漢字検定一級 様、 漢字の大海 様 の記事も要所要所で使わせて頂きました。感謝申し上げます。

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